「呼吸音」の解説

『臨床医学総論』より、呼吸音に関する解説です。「水泡音」「捻髪音」「笛音」などの異常な呼吸音について知ることができます。

「あはきスタディ」では、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の国家試験科目をやさしく解説しています。

国家試験の傾向

「呼吸音」に関する問題について、過去6年分の国試を調べました。

出題回数は「あんまマッサージ指圧師国家試験」で2回、「はり師・きゅう師国家試験」で1回ありました。

あん摩マッサージ指圧師202420232022202120202019
はり師きゅう師202420232022202120202019

計3回の出題で、問題はすべて疾患名を選択させるパターンでした。参考までに、2024年の国試に出題された問題を確認してみましょう。

問題42 呼吸音が減弱するのはどれか。

  1. 無気肺
  2. 気管支炎
  3. 肺線維症
  4. 気管支肺炎
『公益財団法人東洋療法研修試験財団』「第32回はり師きゅう師国家試験問題」より

このように、出題されています。まずは病的な呼吸音の種類を覚えて、その呼吸音はどんな疾患の際にあらわれるのかを押さえていけば、国試に対応できます。

呼吸音の種類

病院で診察を受けるとき、医師が聴診器で胸の音を聴きますよね。あれは、気管支や肺で発生する呼吸音を聴いています。病気のとき、呼吸音が減弱したり、通常では聴こえない異常な呼吸音が聴こえます。

呼吸の減弱・消失、特定の疾患で発生する異常な呼吸音(副雑音)について確認していきましょう。疾患については「教科書に記載があるもの」「過去に国試に出題されたもの」に絞って、紹介しています。

呼吸音の減弱・消失

気胸胸水貯留胸膜肥厚などが原因で、呼吸音が聴こえにくくなります。

気胸
肺から空気が漏れて、肺が潰れてしまう病気です。

胸水貯留
胸腔に液体がたまる状態です。心不全や肺炎など原因は様々です。

胸膜肥厚
肺を覆っている胸膜が、炎症などが原因で厚くなる状態です。

私は肺の周りに障害物(空気・液体・肥厚など)があるため、音が遮られて聞こえないというイメージで覚えていたのですが、実際は病気・病態によって換気量が減少することにより呼吸音が小さくなるようです。


呼吸音の減弱については、2023年の国試に出題されました。問題を確認してみましょう。

問題39 呼吸音が減弱するのはどれか。

  1. 早期肺癌
  2. 緊張性気胸
  3. 気管支喘息
  4. 肺血栓塞栓症
『公益財団法人東洋療法研修試験財団』「第31回あん摩マッサージ指圧師国家試験問題」より

正解はわかりましたか? 

「2. 緊張性気胸」が正解です。気胸には種類があり、「自然気胸」「外傷性気胸」など原因によって呼び方が異なりますが、迷わないようにしましょう。

異常な呼吸音(副雑音)

正常な呼吸音以外の音を、副雑音といいます。

副雑音である、水泡音・捻髪音・笛音・いびき音について紹介します。

水泡音

肺炎気管支炎などが原因で、ブツブツという水泡音が聴こえます。

肺炎・気管支炎は細菌やウイルスに感染して、肺や気管支に炎症がおこる病気です。気管支炎が悪化すると、その奥にある肺にも炎症が拡がり肺炎をおこします。


水泡音については、2024年の国試に出題されました。問題を確認してみましょう。

問題39 水泡音を聴取する疾患はどれか。

  1. 気管支肺炎
  2. COPD
  3. 気管支喘息
  4. 肺線維症
『公益財団法人東洋療法研修試験財団』「第32回あん摩マッサージ指圧師国家試験問題」より

正解はわかりましたか?

「1. 気管支肺炎」が正解です。

気管支の炎症を伴い、咳や痰といった症状が強くあらわれる肺炎を気管支肺炎といいます。

捻髪音(ベラクロラ音)

間質性肺炎肺線維症などが原因で、パリパリという捻髪音ねんぱつおんが聴こえます。捻は「ひねる」という意味で、髪をひねった時の音に似ているため捻髪音と呼ばれます。

『臨床医学総論』の教科書では、ベラクロ(Velcro)ラ音と記載されています。

ベラクロとはマジックテープのことで、ラ音とは副雑音という意味です。マジックテープを剥がした音にも似ているため、ベラクロラ音と呼ばれています。

間質性肺炎
肺の間質(肺胞の周囲組織)が炎症を起こした状態です。

肺線維症
間質性肺炎が悪化すると、肺線維症を発症します。間質が炎症し、厚く硬くなることで繊維化します。

笛音(連続音・ウィーズ)

気管支喘息・COPDなどが原因で、ヒューヒューという笛音が聴こえます。気道の一部が狭くなると、呼吸時に笛のような高い音が聴こえます。

『臨床医学総論』の教科書では、連続音・ウィーズと記載されています。

気管支喘息
炎症を繰り返すことで、気道が狭くなる病気です。喘鳴(呼吸時にヒューヒューと音がする)や呼吸困難などの症状がみられます。

COPD
タバコが原因で気管支に炎症が起きたり、肺胞が壊れる病気です。気道が狭くなり、喘息のような症状がみられます。慢性閉塞性肺疾患ともいわれます。

笛音は、気管支喘息・COPDのように気道が狭窄する病気で聴かれる音と覚えてください。

いびき音

笛音と同様に、気道が狭窄する病気で聴かれる音です。気管支喘息COPDが原因で、グーグーという低い音が聴こえます。

笛音・いびき音は似た病態によってあらわれますが、狭窄する場所の違い(気道の太さや硬さの違い)によって音が変化します。

問題の解き方

異常音が聴こえる疾患は紹介したもの以外にもたくさんあり、すべて覚えるのはかなり難易度が高いです。肺の疾患の違いを覚えるのにも苦労することと思います。

代表的な疾患を覚えて、あとは消去法で答えていくのも一つの方法です。


2024年の国試に出題された問題を確認してみましょう。

問題42 呼吸音が減弱するのはどれか。

  1. 無気肺
  2. 気管支炎
  3. 肺線維症
  4. 気管支肺炎
『公益財団法人東洋療法研修試験財団』「第32回はり師きゅう師国家試験問題」より

これは難しいです。正解は「1. 無気肺」なのですが、実は教科書に載っていません。

無気肺とは肺の一部または全体に空気がない状態です。気管支が塞がっていたり、圧迫によって肺に空気が入らない状況でおこります。換気量の減少によって、呼吸音が減弱します。

「2. 気管支炎」「4. 気管支肺炎」は水泡音、「3. 肺線維症」は捻髪音です。他の選択肢も確認して、消去法で解いていきましょう。

まとめ

呼吸音とその疾患は難しく、なかなか覚えることができない方も多いのではないでしょうか?私も学生時代、苦手意識を持っていました。

理解が難しいときは、簡単なもの、理解しやすいものから覚えていくといいですよ。何度も「解説を読む」「問題を解く」ことを続け、情報にたくさん触れることで必ず記憶が定着していきます。諦めずに頑張ってくださいね。

おすすめの勉強は、要点を覚えたら過去問を解いてみることです。記憶の定着にはアウトプットがとても重要だからです。国試対策のオリジナル問題も作っているので、ぜひ挑戦してみてください。

この記事は2024年5月時点の情報です。正確な情報を発信するように努めていますが、もし誤りがありましたら、コメントで教えてください。
異常な呼吸音が聴かれる疾患は多岐にわたります。記事内容は執筆者が重要だと思うポイントをまとめたものです。国家試験の全ての出題範囲を網羅しているものではありませんので、ご了承ください。

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